帆布(はんぷ)とは?生地の種類や号数などを詳しく解説

はじめに

「帆布」と聞くと、皆様どのようなイメージをお持ちになるでしょうか。「丈夫」、「しっかり」、「生成り」、「分厚い」、「バッグ」、「帆船」、「キャンヴァス」。いろいろな声が聞こえてきます。これから帆布について詳しく説明していきたいと思います。

帆布とは

帆布とは、広い意味では太いより糸で平織した厚地で丈夫な織物である。帆布といえば綿のイメージだが大麻、亜麻、租麻、黄麻などの麻帆布、木綿で織った綿帆布、ナイロンなどの合成繊維帆布がある。また、帆布のことを“canvas(キャンヴァス)”ということもある。外国ではキャンヴァスと呼ばれているからだ。

(注1) 平織
織物の三原組織の一つで、たて糸とよこ糸が1本ずつ交互に交じって織られたもの。表面が平滑で耐久力に富み実用的で利用度が高い。金巾(かなきん)、ポプリン、羽二重などが代表的。
平織から変化したものに畝織や魚子(ななこ)織などがある。
(注2) 三原組織
経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の上下の交錯の状態。もっとも簡単なのは2を単位に構成される平織、次いで3を構成単位とする綾織、また5、7あるいはそれ以上を単位として将棋の桂馬のような飛び方で構成される繻子織があり、これらを織物の三原組織という。
(注3) 黄麻
ミナノキ科の一年草。葉は長卵形で先がとがり葉の付け根に黄色い小花をつける。茎からジュートとよばれる繊維をとり、コーヒー豆などを入れる袋を作る。インド原産

帆布のあゆみ

帆布の歴史は古く、古代エジプトでは麻帆布が作られ帆船に用いられていたようである。日本では、織田信長の帆船が帆布を用いた最初という説が有力だが、綿帆布ではなく、わらや麻なども織り込んだものだったようである。
後に、創意工夫で木綿の帆布を作ったのが工樂松右衛門(1743~1812)である。工樂松右衛門は、兵庫県高砂市に生まれ、兵庫県佐比江町(神戸市兵庫区)御影屋に奉公、独立して兵庫屋の屋号で回漕業を営んだ。そのとき帆の研究をし、帆布を改良し、大きく丈夫な綿布を発明した。これが松右衛門帆と呼ばれたもので、佐比江町(神戸市兵庫区)と播磨二見(兵庫県播磨町)に製織工場を持ち商品を生産した。そして、全国に普及した。北前船にも使用された。和船の帆として江戸後期から明治にかけて、それどころか所によってはおそらく昭和になっても松右衛門帆が使用されていた。

明治になると、綿帆布は、様々な製品に使われるようになった。鉄道貨物のシート、テント、酒や醤油のこし布、袋物、トラックの幌など多種類にわたって大量に使用されるようになった。丈夫なので戦時中には軍事品にも多く使われたそうだ。

現在では、綿帆布のシートやテントなどは軽くて撥水性のある化学繊維のポリエステル帆布に代わってしまった。しかし、綿帆布でないとだめなものもある。溶鉱炉など火が身近なところで働く人々の服、電気工事に携わる人の工具袋、エスカレータの手すりの裏などである。また、ファッションとして綿帆布の風合いと丈夫さでかばんにも使われている。ちょっと変わったところでは、お相撲さんの練習用のまわしや競馬用のゼッケンも綿帆布だ。また、外国で織られたキャンヴァス地も帆布としていろいろな製品に使われている。

綿帆布の特徴

綿帆布の特徴は、「丈夫」ということである。前章の“帆布のあゆみ”でも述べたように、帆としての用途から発展してきた。帆は、風雨にも耐えるものでなければならない。必然的に丈夫な布となったのである。
帆布は、より合わせた綿糸をたて糸とよこ糸を交互に上下させて織っていく。すなわち平織である。より合わせた糸(撚糸)をつかうことで織りあがった帆布は、とても丈夫で耐久性にとみ、通気性にも優れている。
もう一つの特徴は、「風合い」である。例えば、バッグなら新品の時はシャキッとしているし、使っていくとやわらかくなじんでいく。新しいときのよさ、そして使い込んだときのよさ、どちらも風合いとして使う人とともに歩んでくれる。

綿帆布の種類

綿帆布は厚さで種類を分けている。帆布は糸のより本数で厚さを変化させる。通常、1~11までの帆布の「号数」で表示される。
号数が小さいものほどより合わせる数が多いので厚く、重く、硬い生地になる。すなわち1号帆布が一番分厚くなる。また、厚さから考えると、8号帆布からは、家庭用ミシンでも縫うことができる。
号数は、以前JIS規格で定められていたが、1997年に廃止された。だが、現在もJIS規格を基準値として製作しているところが多い。下記の表に号数についてまとめた。

号数 原糸 密度(本/インチ) 重さ
(g/㎡)
用途
番手 たて糸
より合わせ数
よこ糸
より合わせ数
たて糸 よこ糸
1 10 7 8 28-32 18-22 1014 馬具の基布
バッグ
2 10 7 7 28-32 16-20 941 ベルトコンベア基布
ゴージャッキ収納袋
レスキュー収納袋
3 10 6 6 28-32 19-23 867 相撲けいこまわし
船舶ハッチカバー
4 10 6 5 29-33 18-22 794 体育館フロアシート
船具
船舶ハッチカバー
5 10 4 5 32-36 23-27 720
6 10 4 4 32-36 23-27 647 トートバッグ
体育館用マット
シューズ
7 10 3 4 34-38 24-28 573 バッグ
8 10 3 3 34-38 24-28 500 帽子
シューズ
バッグ
ホワイトデニム
犬の玩具
ライダースジャケット
モップ
9 10 2 3 44-48 33-37 510 トラックの幌・シート
ホワイトデニム
ファイアーマンジャケット
ライダースジャケット
バッグ

綿帆布の取り扱い

綿帆布の取り扱いであるが、製品になったものについては基本的に丸洗いは避けるべきである。
例えば、バッグは、丸洗いすると型が崩れる可能性がある。また、表面加工していたりするとはがれるかもしれない。汚れのあるところ(油性系の汚れ)には、水に中性洗剤を入れてやわらかいブラシでこするかトントンとたたいておとす。また、製品についている注意事項をよく見ることが大切である。

おわりに

帆布についてお話してまいりましたがいかがでしたでしょうか。現在は丈夫さだけでなく、ファッション性と機能性を考慮したバッグや小物なども数多く出てきています。また、私たちの知らないところで活躍しているコンベアの基布などもあります。

帆布製品をじっと眺めてみるとなかなか奥深いです。何とか良い帆を使用して安全でスムーズな航海をしようと苦労した先人たちの思いがありました。帆をはって航海した帆布に心を馳せると雄大な気持ちになります。帆布のものと一緒にお出かけしたくなってきました。

参考文献

司馬遼太郎歴史のなかの邂逅3 ―徳川家康~高田屋嘉兵衛|司馬遼太郎|中央公論社
菜の花の沖|司馬遼太郎|文集文庫
播州織物の製造工程・織物の分類・発達史|西脇市郷土資料館
兵庫県大百科事典|神戸新聞出版センター
ブリタニカ国際百科事典|平凡社・帆布トートバッグの本|成文堂新光社
Kobe University Repository 松右衛門帆|松木 哲